血と炎の恋人たち




「だから待ってろって言ったのに」

 屋敷の中を見回ってきたケイレインがあたしのところに戻ってきた。
 あたしはといえば、広間にごろごろ転がってる魔物の死体の真ん中で腰が抜けたままへたりこんでる。

 今回の仕事は古い屋敷に住み着いちゃった魔物の退治。
 乱戦になるだろうから付いてくるなって言われてたんだけど、ケインが心配だったから私はこっそり付いて来ちゃった。

 んで、結果がコレ。
 魔法で援護しようとしたんだけど、魔物に気付かれちゃってケインに守ってもらっちゃってケインの大剣が頭の上をぶんって通りすぎて全部倒したら気が抜けちゃって腰が抜けて魔物の血だまりの中に座り込んじゃった。

 うぇぇぇん、血がべとついて気持ち悪いよー。恐かったよー。

「ほら、帰るぞ」

 情けない顔でへたりこんでる私を呆れたように見やって、ケインは私に手を差し出してくれた。
 でも、ケインも魔物の返り血でべとべと。
 握った手はヌルってすべってあたしは血だまりの中に逆戻りした。

 ますます情けない顔になったあたし。ケインははぁっとため息ついて、あたしの腰をぎゅっと持って担ぎ上げた。
 ぐるんと回る視界。じたばたするあたしのお尻をパチンと叩いて、ケインはにやりとした、ような気がした。見えないから分かんないけど。

「帰ったらまず風呂。それから、勝手に付いてきたおしおき、だな」

「ふぇ〜ん…」

 嬉しいような、何されるのか分かんなくて恐いような。
 楽しそうに笑うケインの肩の上で、あたしは遠ざかっていく屋敷を眺めながら思った。
 あの屋敷、いったい誰が掃除していったい誰が住むんだろ。掃除までしろ、とか言われないよね…?






2005年10月2日

久しぶりな女の子の1人称。やっぱ書きやすいですねぇ〜
ケイレインはむっつりスケベだと思われます(笑)
2人は恋人同士で小さな家に住みながら村の冒険家兼何でも屋みたいな仕事をしてます。

読んでくださり、ありがとうございました♪