「娘さんを僕にくださいっ!」

 そう言ってあたしの両親に頭を下げたのは、昨日まであたしが通っていた学校の先生だった。





卒業式の翌日




 畳に土下座してあたしの両親と相対してるのはまぎれもなく、昨日卒業した学校の先生。
 両親が何か言いたげにあたしを見たのを、必死に首を振って否定する。言葉にしなくても何が言いたいのか分かるのは長年の親子の絆の表れか……いや、そうじゃなくて。

 聞いてない、聞いてない。

 先生とは付き合ってなんななかったし、告白された覚えもない。だいたい、3年間で何回まともに話したことがあるよ?
 困惑ぎみのあたしたちを前に、正座をした先生…もとい、本名 吉野豊はせつせつと語り始めた。

「実は、入学式に遅れてきたお嬢さんを一目見てから、ずっと気になっていたんです。
今まで、生徒だからと我慢してきました。でももう卒業したんだからうちの生徒じゃない。
どうかお願いです。私と付き合ってください!!」

 そういって先生はあたしを真剣な目でみつめる。
 …まぁ、はっきり言って悪い気はしない。順番は激しく間違っているとは思うけど。

 彼は人気の数学教師。どんな生徒にも気さくで陽気。25歳という若さもあいまって、女子生徒のあこがれの的だった。
 …もちろん、あたしもその女子生徒の1人。
 真剣で強い視線に顔が赤くなる。
 つきあってみるだけなら、いいかもしれない。
 卒業したんだから、別に禁断の恋でもなんでもないし。

「よろしくお願いします、ね?」

 照れながら笑いかけると、先生はあたしよりももっと赤くなって嬉しそうに笑った。
 両親、ほったらかし(笑)





2005年9月4日

えっと、はじめに言っときますとこの話、実話です。
もちろん、細部は変えてありますが大学の先生の奥さんから聞いた、本当の話。
卒業式が終わった日に家に行ってプロポーズ。しかも入学式から狙っていた、という…(苦笑)
事実は小説より奇なり、とはよく言ったものです。
先生の奥さん、聞いたお話を勝手にネタにしてごめんなさいww
読んでくださり、ありがとうございました♪