〜お正月くらいは神様らしく〜




 お正月というのはうちの神社が1年で1番忙しい日、だったりする。
 そして、神様らしくないうちの神様が1番神様らしくなる日、だったりもする。


 村の人々がお参りに来る社殿の奥。御簾を下ろして中が見えなくなってるところにうちの神様、ハクヤはいて、やってくる人々に声をかける。
「よう、白草のじいさん自力で歩けるようになったんだな!」
 とか、
「中山の小僧、おっきくなったな〜」
 だとか。
 いくら小さい村だとはいえ、住人の名前とかを全部覚えてるの見ると、ああ、この人はやっぱり神様なんだなーって感じがする。

……これがなければ。





 この神社の巫女である私だって、お正月は忙しい。
 小さな神社だから、巫女は私1人だけ。神主さんも神社の外に住んでいて、必要な時にやってくるくらい。
 臨時のバイト巫女達を監督して、トラブルがあったら飛んでいって。……じっとしてられないくらいに忙しい、はずなんだけど。

「……離せ」
「やだよ」

「なんで私がここにいなきゃならないの」
「だって、美緒は俺の巫女だから」

 語尾にハートがつきそうな口調で断言したのはいちの神様、ハクヤ。私はいま、彼の腕の中にいる。
 仕事は山積みだってのに、私を抱えたまま離そうとしない。
 私は落ち着かないのと、こうしてる間に境内の方で何が起こってるのか気掛かりで落ち着かない。
 だからさっきから、「離せ」「いや」の問答が続いているわけ。
 どうしたもんかと考えていると、境内のほうが騒がしくなってきた。なにかトラブルがあったらしい。 これ以上はここにいられない。そんな気持ちでハクヤを睨むと、しょうがないなという顔をして開放してくれた。
 ありがたい。まぁ、原因はこいつなんだけど。
 立ち上がって飛び出していこうとすると、床にあぐらをかいたハクヤが私の袖をつかんで引っ張った。

「なに?」

 止めてくれるなと顔をしかめて睨みつけると、彼はにっこり笑った。

「神様の仕事、ちゃんとやってたよ。見直した?」

 笑顔に少し見とれて、我にかえって台詞の意味を考えて、私の頭に血が上った。

「アホか!!」

 境内のトラブルに駆け付けた私の顔は怒りやら照れやらで真っ赤だったに違いない。



そんなお正月のいちにち。





2006年1月3日

お正月→初詣→神社っていう連想ゲームで『神楽』シリーズ復活ww
久しぶりに書いたので、ハクヤがなんだか子供っぽくなってますな。彼は今回、神様らしいところを美緒に見せて、惚れ直してもらいたかったらしい。
その企みが成功したかどうかは、皆様の判断にお任せしたいと思います(笑)
どんどんバカっぽくなる神楽シリーズ(汗)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪