真夜中の脳年齢測定
「なーなーウルスー。脳年齢測定しよーぜー」
「いつもながらお前、唐突だな。しかもそれ流行ったのちょっと前じゃねーか」
「まーまー、そう言うなって」
言って仙人は手元の機械の電源を入れた。
ぴろぴろぴろん、と音楽が鳴ってポリゴンのおじさんの顔が現れる。
タッチペンを握った仙人は迷わず個人データ作成を選んだ。
――― 名前を入れてください。
「仙人、っと」
「お前その名前で通す気かよ」
「まぁいいじゃん」
――― 次に、生年月日を入力してください。
「どう答えるつもりだよ」
「だいたいでいいんだよそんなのはー」
えーっと魔女狩りが始まったころくらいには生きてたからー。
「14世紀、西暦1300年すぎくらいくらいかな」
1350年っと。
「いやちょっとソレは認識しないだろ。人間が生きてる齢じゃねぇ」
――― あなたは657歳ですね。
「だいたいそんぐらいってことにしてまーす」
「うそっ!?」
「へっへー。ちょっとプログラムいじったのさ」
「意味あるのかそれ」
――― では、あなたの脳年齢を測定しましょう。いま声が出せる環境にいますか?
「はいー」
――― 後出しじゃんけんです。画面の指示にしたがって、グー、パー、チョキと声に出して言ってください。
「お、これCMでやってたやつじゃん」
「よーし、がんばるぞー」
意味もなく腕まくりをした仙人は『スタート』を押した。
「パー!」
――― もう一度。
「パー!!」
――― もう一度。
「パーッ!!!」
「おー、唾とんでるぞ唾」
――― もう一度。
「いくら大声だしたって機械が認識できてねぇって」
呆れた顔の吸血鬼を睨んで、むきになった仙人は限界まで胸に息を吸い込んだ。
「っっ!近くで超音波発するなよ!耳がいてえじゃねぇか!」
「だってなかなか認識してくれないんだもん」
「だからって超音波はさらに無理だろ」
かしてみ、と仙人から機械を受け取った吸血鬼は機械に向き直って言った。
「パー」
――― ピンポン。
「うっそぉ〜」
「でかい声ならいいってもんじゃねぇだろ」
得意げな吸血鬼は、そのまま仙人に代わってゲームを続けた。
結果。
「52歳…」
「へっへー、僕は30歳〜」
「うそだろ、俺は精神年齢23って設定なのに…。くそっ!20代になるまで何度だってやってやる!」
「はっはっは、せいぜい頑張りたまえ」
脳年齢30歳と52歳の人外のもの達はゲーム一つに翻弄されるのだった。
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