昔々


サンタ族には黒サンタ族と赤サンタ族がいました。


でも今は赤サンタ族しかいません。


それはどうしてなのでしょう?
















これは昔々 まだサンタ族が2つに分かれていたころのお話。

















そのころのサンタ族は


自分で袋をかついで 足で一軒一軒回っていました



赤サンタ族は働き者の一族。


黒サンタ族は怠け者の一族。


それでも2つの一族が必要だったのは


サンタ族の数がどうしても足りなかったからなのです。



黒サンタ族はそれをよく分かっていました。


ですからいつもいつも


クリスマスの夜は寝すごして


赤サンタ族よりもおそく配っていたのです。


そうすれば赤サンタ族が手伝ってくれるからです。



毎年毎年黒サンタ族は言います。


「来年こそは君たちを僕たちが助けるよ」


赤サンタ族はそれに答えます。


「来年を楽しみにしておくよ」



けれどもその約束は果たされることはありません。


いえ


約束ではありません。


だって黒サンタ族は


約束する と 言ったわけではないのですから。


ですがそれは


赤サンタ族にとって 約束でした。



あまりにも約束が果たされることがないので


赤サンタ族はサンタ族の長


たった一人の金のサンタに相談することにしました。



赤サンタ族は言います。


「黒サンタ族に約束を守って欲しいのです」


金のサンタは思います。


―――黒サンタ族はどうすれば約束を守るのだろう?


それはとても難しいことでした。


だって黒サンタ族には


最初から約束を守るつもりがないのですから



―――12月24日


今年も黒サンタ族は約束の時間にやってはきません。


かわりに金のサンタがやってきました。


これはとてもとてもめずらしいことです。


金のサンタはサンタ族の住む家々を


黒サンタ族と赤サンタ族が出かけているあいだ


守らなければならないのですから。




「今年の約束は守られた」


金のサンタは言いました。


ですが赤サンタ族は首をかしげます。


どこにも黒サンタ族の姿は見えません。



ですが


とてもとてもめずらしいものが見えました。


それはトナカイです。


それからもう一つ。


ぎん色のもの。


金のサンタが言うにはソリと言うのだそうです。



金のサンタが言います。


「今年からはこのソリに袋をのせて


 トナカイに引かせてプレゼントを配るのだ」


ですが赤サンタ族はとても不安そうです。


「このトナカイはあばれませんか?」


サンタ族の住むところにはけものがいません。


もちろんさわったこともないのです。



「大丈夫」

と 金のサンタは言いました。


「このトナカイは黒サンタ族で


 黒サンタ族はプレゼントを配りおわらなければ戻れないのだから」


だから約束は守られたのです。


黒サンタ族が赤サンタ族の手伝いをしています。


そうするとサンタ族の数は半分でもじゅうぶんでした。




こうして黒サンタ族は


私たちの世界に姿を見せなくなりました。


私たちは赤サンタ族を赤サンタとはもう呼びません。


それから黒サンタ族は


いつのまにか元に戻ることをやめて


いつまでもいつまでもトナカイのままだったそうです。



























おしまい





…黒サンタ族と赤サンタ族のお話といいつつ…
金サンタが出張っているような気もしつつ…。

ほのかに残酷な童話の雰囲気が好きです。