『噂の真実』







「…2人とも知ってる?」

不意に、炎を背にした蒼黒が言った。
真白い炎は彼女自身を象徴する色。
白き浄化の炎は彼女を照らし、それに魅せられた男2人の姿を映し出す。

「何を?」

と、口々に言えば、彼女は白い炎を、己の刀、紅月に飲み込ませて2人に向き直る。
取り込まれた白き炎は紅月の糧となる。
チャクラ刀である紅月は、こうして死した忍のチャクラを取り込み、更に強くなるのだ。

「3匹の獣の噂」
「獣?」
「ああ。あれだろ?」

疑問と同意を同時に得、蒼黒はどちらに対してか頷いた。

「木の葉に現われた3匹の獣。一人、炎を纏い。一人、金色に輝きて。一人、黒雷を操る。暗部最強の名を纏うに相応しき獣たち」

歌うように言葉を紡ぐ。
暗部内で密やかに、重々しく、けれども華やかに広まる噂。

「って…それ俺たちのことなわけ?」
「どう考えてもそうだろ?」
「ええ。誰かは知らないけど、この前"やこう"での合同任務があったでしょう?」
「ああ。そういやあれくらいだもんな。他と組んだの」
「あー?」

どうやら覚えていない様子の銀赤に、蒼黒はくすくすと笑って2人に頷く。
その顔には既に暗部面はつけられていない。穏やかな白き瞳が温かに2人を見守る。

「うん。彼らが発信源だとは思うけど」
「ふーん」
「ま、どうでもいいよな」

2人の言葉にまたも蒼黒は笑った。

「そうだね」

誰が何を言おうと、自分たちには関係ない。
3人がこうしてここに居て、3人でいつまでも共に居れれば構わない。
白金が、ふと呟いた。

「でもさ」

ふわり、と黒髪を闇に舞わして、面白そうに、にやりと口を吊り上げた。

「獣って格好悪くね?」
「「……………」」

銀赤が、へ?と口を開いた。
蒼黒が、不思議そうに首を傾げた。
白金は、2人に大事な話を打ち明けるように顔を寄せる。

「だからさ、3匹の獣の噂、塗り替えね?」
「塗り替えるって…どう?」
「何?何々どーいう風に!?」

なんだか急に眼を輝かせ始めた銀赤と、いまいち理解していない様子の蒼黒に眼を細めた。

「獣…ってのはかっこわりぃから…せめて銀獣とか」
「銀獣!いいかも!!」
「そう…だね。どうせ噂されるならかっこいい方がいいかしら」

2人の言葉に、ようやく成る程と蒼黒が頷いて。

「で、2つ名もついでに決めねぇ?」
「2つ名も?」
「ああ。"写輪眼のカカシ""木の葉の黄色い旋風"…あんまりにも単純だろ?どーせなら自分たちでいいの決めようぜ」
「それ、いいな!あのさ!折角だし、色、入れねぇ?自分達のさ」
「…私たち自身の…色?」
「そう!蒼黒は白と赤!銀赤は黒と銀!俺は蒼と金!」

白金の提案に、楽しそうに他の2人も頷く。
暗部の格好で、その身を血に濡らしてはいても、彼らは無邪気に笑った。
3人が、ここに居るから。

「私は赤かな。紅月がいるから」
「んじゃ、俺は…黒か?黒月があるしな」
「えー俺は?月弧…んんーーーー金色?」
「だね」
「金色の獣?あ、銀獣か」
「狐でいいんじゃねーの?お前は」
「銀色の狐?金なのに?」
「木の葉の銀獣、金色の銀狐…」
「いいんじゃん」
「へっへ。なんか蒼黒が言うとよく聞こえるから不思議だよなー」
「そう?」
「そ。んで、銀赤は何だ?黒色の獣?」
「いや…黒雷の銀鷹…とかどうよ?」
「黒雷…黒月の導く雷ね。…獣は鷹?どうして鷹なの?」

不思議そうな蒼黒の言葉に白金が笑う。

「まっさか、鷹がなんかかっこよかっただけーとかいっわねーよなーーー?」
「………………まさか」
「………………………当たりかよ」

っつか、そんなのがいきなり出てくる辺り、結構前からこうするつもりだったんだろうな。と銀赤が頭の隅で思った。

「じゃあ…私は…狼なんてどうかな?銀色の狼。銀狼」
「ああ。いいかも。かっこいい!」
「それに、蒼黒にあってる」
「そう?ありがとう。2つ名はどうしようかな?」
「それそれ!考えたんだ」
「あ!白金ずっりぃー!!!」
「蒼黒のさ、紅月。紅月が血を蒸発させる時。あれって煙みたいだろ?だからさ。赤煙、なんてどうよ?」
「赤い、煙?」
「そ。どうよ?」
「いいよ。赤煙の銀狼。うん。ピッタリ」

3人で顔を見合わせて笑った。
銀赤が声を張り上げる。

「俺は暗殺戦術特殊部隊―――木の葉の銀獣が一人!金色の銀狐の銀赤!」

驚いたように白金が銀赤を見て、にやりと唇を吊り上げた。

「俺は暗殺戦術特殊部隊―――木の葉の銀獣が一人。 黒雷の銀鷹の白金!」

にこにこと、柔らかな笑顔で蒼黒も続けた。

「私は暗殺戦術特殊部隊―――木の葉の銀獣が一人。 赤煙の銀狼の蒼黒」

笑い声が、広がる。
3人の子供の無邪気な笑い声。
今はもう、消え去った死体と炎と。
全て、全て闇にかえる。
楽しそうな、声を残して。


木の葉の銀獣。
それは、木の葉暗部最強の3人のこと。

一人、炎を纏い。
一人、金色に輝きて。
一人、黒雷を操る。

赤煙の銀狼。蒼黒―――。
金色の銀狐。銀赤―――。
黒雷の銀鷹。白金―――。





「塗り換わった?」
「「塗り換わった!」」


まことしなやかに闇を駆ける噂。
その噂が本人たちによって広められたものだと知る者は…いない。
2005年9月18日
鹿陽さんからのリクエストで銀獣設定の「幼いヒナタと他2人の出会いと、ばれ以前に銀獣としてこなした任務あーんど私生活」です。
一応ばれ以前に銀獣としたこなした任務の部分だったはずなのですが…どうでしょう?
期待と違うのでは、と不安ですが、宜しければどうぞお受け取りくださいuu
尋常ではなくお待たせしてすみませんでした。
リクエストありがとうございましたvv
これからもよろしくお願いしますv