になったマグカップ









 幽霊屋敷で、皆でお茶会。
 こういうとき、それぞれ飲むものは決まってる。

 あたしはミルクティー。

 ポップンはあまいあまい、ココア。

 マリオットは緑茶。

 そして、ガードルードは苦い苦いコーヒー。

 みんな、飲むものがばらばらで大変だとマリオットはぼやくけれど、その後姿はなんだか嬉しそう。






「おじゃましまーす」

 誰にいうでもなくそうつぶやいて、あたしはキッチンへとそっと足を踏み入れた。
 すっかり料理好きの悪魔の聖域(って言い方も変だけれど)となってしまったキッチンには件の悪魔の姿はなく。
 あたしはできるだけその聖域を乱さないように、そっと戸棚に手をのばす。

 あたしには、ミルクティー。

 ガードルードにはコーヒー。

 マリオットとポップンは、学校の部活動で今日は留守。
 だから、今日は2人だけのお茶会。






「おまたせー」

 ほかほかと湯気をたてるマグカップを2つ持って居間に戻ると、銀色の髪の悪魔はソファーに寝そべって本を読んでいた。

「おかえりー」

「ん」

 おかえりというほど遠出してないのにそういう彼にちょっと笑って、マグカップを差し出す。

「ありがと」

 受け取った彼は、一口すすってあたしを見た。

「どう?」

 我ながら、ちょっと緊張しすぎてるんではないかと思う。
 自分が作ったものを人に飲んでもらう、ただそれだけのことなのに。

「ん、うまいよ」

 言ったガードルードの顔をいろどるのはいたずらっ子の少年のような、そんな不敵な笑み。
 にやり、とゆがめられた口元を見てあたしがこの上ないほど安堵したのはいうまでもない。

「いつものと違うな。ココア?」

「カフェモカよ。たまには甘いのだっていいでしょう?」

 彼と同じ種類の笑みを返しながらあたしは言う。
 だって、2人きりのお茶会なんだから。