窓の外のはとてもよく晴れていたけれど、教室の中は地獄でした









「お二人はどういう風に生まれたんですか?」
 毎月恒例の仙人と吸血鬼ウルスとのお茶会。
 その席で渡されたマグカップを両手で包み込むように持ちながら、小夜は尋ねた。

 そろそろ春の気配が漂う3月とはいえ、夜はまだまだ寒い。
 地上よりさらに風が強い上空を飛んできたとなれば、なおさらだ。
 ちなみにマグカップの中身は、仙人がこのごろはまっているというしょうが紅茶だ。
「すりおろしたしょうがを紅茶に加えるだけの、簡単レシピ」と、どこかのCMのマネをして渡されたそれは冷えた身体を芯から暖めてくれた。

 突然の小夜の質問に、仙人と吸血鬼ウルスは顔を見合わせる。
 先に口を開いたのは、ウルスだった。
 突然、真面目な顔になって仙人に向き直る。

「おまえはアレだろ、竹の股から生まれてきたんだろ」

 本当のことを言っていいんだぞ、と言われた仙人はニヤリ、と口元をゆがめる。

「僕は筍扱いかい。まぁ、木の股じゃなくて竹ってとこが中国らしいから及第点をあげてやってもいーけどね。違うよ。
コウノトリさんが僕を師匠のとこに運んできたのさ」

「そのコウノトリはおまえをどこから攫ってきたんだよ」

「さぁ?僕の両親のトコじゃないの?
それよか、ウルスは死んだ母親の腹かっさばいて生まれてきたってホント?」

「そんな気色悪い生まれ方するかよ。ホラーじゃねーか」

「存在自体ホラーな癖して何を言うか」

「まぁアレだ。居たらしいぞ、そんな生まれ方したやつ。
ヨーロッパじゃ土葬だろ?妊娠したまま死んだ女の死後硬直が墓の中で解けて、腹の中の子供が出てくるってことあったらしーぞ」

「でも日本じゃ火葬だろ?腹の中に子供がいた場合一緒に燃やしてるってことだからそっちの方が残酷だな」

「いやいや、通夜があるからそーゆー場合は少なかったらしーぞ」

「へー、そーなんだ」

「おいおい、しっかりしてくれよ東南アジア出身」

「おまえみたいに葬儀の風習の違いに詳しくなるよーな趣味持ち合わせてねーんだよ、ヨーロッパ出身」

「……そいや、なんでいきなりそんなこと訊くんだ?」

 ひとしきり漫才のような会話を交わした後、今まで忘れていたと言わんばかりの視線に小夜は少々傷ついた。

「えーっと、保健体育の授業でビデオ見たの」

 それも、結構リアルな。

 妊娠する前からする瞬間、妊娠中の体の変化、出産まで。ちょっとそこまで映すのはどうだろうと思われるところまで映ってるビデオだった。

 出てたのが外国人夫婦だったからまだ大丈夫だったようなものの、日本人だったりしたらあまりの現実感に吐き気をもよおすところだった。

 両親はそういう風に自分を産んでくれたのだとは頭で理解できるのだが…思春期の心理は複雑である。

「……若いなー」

「ああ、若いな」

 小夜の話を聞いてなんだかほのぼのする仙人とウルス。
 縁側で茶をすすっているような気分になって両手で紅茶をすすった。

「いまさらそんなの見て気分悪くならない自分が確信できるよ」

「もっとすごいの見てるもんなお前」

 いや、やってるって言ったほうがいいのか?とニヤニヤするウルスを仙人のチョップが襲った。

「ちょっとー、僕の清純なイメージ壊さないでくれる?」

 もんどりうって倒れるウルスを無視して、仙人は小夜に満面の笑みを向けた。

「僕は清らかな永遠の15歳だから!そこんとこよろしく!」

「は、はぁ……」

 勢いに押されて思わず頷いてしまってから小夜は思った。
 ……結局、よく分からなかった。

 うまいこと2人に言いくるめられてしまった小夜であった。