『双子』







 とある国に、とある双子がいました。
 男の子と女の子の一卵性双生児。
 双子の父親も、双子でした。
 だから、知っていたのです。
 これから双子であるという事実がもたらす未来を。
 父親は、苦しみました。
 どうしても、自分と自分の双子の弟と、同じ道を歩かせたくなかったのです。
 悩んで 悩んで
 一つの決断をしました。


 一人の子供を誰にも見せずに隠してしまうことを―――。








 とある国に、とある双子がいました。
 男の子と男の子の一卵性双生児。
 双子の父親は、国で最も偉い人物でした。
 ところで、この国は双子の存在を嫌っています。
 父親は、迷いました。
 目の前には不吉の前兆と忌まれる双子。
 けれども自分の息子たち。
 どうしても、彼らを殺したくなかったのです。
 悩んで 悩んで
 一つの決断をしました。


 一人の子供を誰にも見せずに隠してしまうことを―――。





 彼らは大きくなりました。





 とある国のとある双子の女の子は、ヒナタと名づけられました。
 彼女は父親の娘として、光の中で修行に励みます。
 とある国のとある双子の男の子は、ヒバリと名づけられました。
 彼は闇の中で双子の姉を守ります。

 ヒナタとヒバリはとても仲良しです。
 2人は互いにとっての自分がとても大切なことを分かっていました。
 限られた時間の中で、2人、安らかに顔をあわせます。




 とある国のとある双子の男の子は、テマリと名づけられました。
 彼は、彼女として国を欺くように父親より命じられました。
 国を動かすにあたって、その方が都合が良かったのです。
 とある国のとある双子の男の子は、テジナと名づけられました。
 彼は、双子の兄とは違って、男として闇に住まい、時に光に現れます。 

 テマリとテジナはとても仲良しです。
 二人は互いにとっての自分がとても大切なことを分かっていました。
 時にテマリとテジナは互いを交換して違う立場を楽しみます。




 光の中で生きる己の分身。

 闇の中で生きる己の分身。


 とても対照的で、恨み合う立場にあってもおかしくないはずなのに、彼らはどこまでも互いを愛していました。
 彼らは自分を不幸だと思ったことはありません。




 そんな、とてもよく似た双子の2組。




 ある時、とある国の双子の男の子、テマリは、とある国、火の国へと出かけました。
 火の国を滅ぼすためにです。
 テジナは里でお留守番。
 テジナは暗部ですが、国に縛られる暗部ではないので、好き勝手に遊んでいました。

 本当は、音の監視もしていましたが。



 ある時、とある国の双子の女の子、ヒナタは、中忍試験を受けることになりました。
 本当は暗部並みの力を持つヒナタにとって、中忍試験はとても簡単なものでしたが、父親に命じられたように、落ちこぼれの人間としては精一杯頑張って、班員の足を引っ張らなければなりません。
 ヒバリは家でお留守番。

 ………の、筈でしたが、姉が大好きなヒバリは、ヒナタを追ってきてしまいました。



 さて、中忍試験で、ヒナタは3人の姉弟に出会いました。
 赤みの強い金色の髪をした女の人。
 黒い頭巾を被った男の人。
 赤い髪をしたひょうたんを背負った男の子。
 この3姉弟との接点は、ヒナタにはあまりありません。
 けれど、幾度か会う内に、ヒナタは、あれ?と思いました。
 何故でしょう?
 ヒナタには、時に女の人が男の人に見えてしまったのです。
 それが、テマリ。

 ヒナタには不思議でたまりません。
 どうして?
 どうして?
 気になって気になって気になって。
 とうとうヒナタは本人に聞くことにしました。
 それが一番手っ取り早いからです。
 ヒナタはテマリを呼び出しました。
 他の2人に変な顔をされてしまいましたが、ヒナタは構いません。

 本当に、本当に気になって仕方がなかったのです。