『改めましてこんばんは』






「こんばんは」

 そう、にっこり笑った少女に、3人は、ものの見事に絶句した。
 当たり前だ。
 当たり前だ。
 当たり前だ。

「―――…」

 思わず、彼女の名前を呟きそうになる。
 ただの暗部が知っているわけもない彼女の名前を言いそうになる。
 そう、そうだ。
 今の自分達は彼女の知る自分達ではない。

 暗殺戦術特殊部隊第10班"礼花"として、この場に相応しい対応をしなければならない。
 ―――の、だが。
 あまりにも状況が不鮮明かつ不愉快かつ、意味不明かつ、把握できないために、完全に固まった。

 だって、周りを見てみよう。
 死体。
 死体。
 死体。
 生首。
 血。
 折れた刀。
 散らばった書類。
 そんでもって、敵地。

 その、血やら死体やら色んなもののど真ん中で。
 ―――そう、そのど真ん中で、少女はにっこりと満面の笑顔を見せていたのだ。

 それで、どう、反応しろと。

 固まるのも無理はない。
 絶句するのも無理はない。
 幻だとか、罠だとか、夢だとか、現実逃避したくなるもの無理はない。
 
 というかありえない。
 本当ありえない。

 ありえないのに、確かに少女はそこにいて、それはもう見たこともないような笑顔をこちらに向けていて。

「―――」

 意味が、分からない。
 本当にいつもどおりの格好なのだ。
 黒い髪は肩先まで伸びて綺麗な艶をはなっているし。
 真っ白な瞳は真珠みたいに輝くし。
 やぼったい服に隠されていても、バランスのいいプロポーションは分かるし。

 あんまりにも反応がないのをつまんなく思ったのか、少女は首を傾げ、ああ、と頷く。

「私は日向ヒナタ。自己紹介はいらないと思ったんだけど、その格好の貴方たちに会うなら必要だったかな」
「―――!?」

 一体何を言い出すというのか。
 唖然として矢張り動けない最強の暗部と名高い"礼花"。
 その醜態を嘲るように、ヒナタはにこりと笑って。

「今日はね、貴方たちに会いにきたの。無影の威志、奈良シカマル。澄神の柯茅、秋道チョウジ。幻華の砺埜、山中いの」
「「「―――!!!!!!」」」

 思わず、手が、出た。
 刀が走る。
 印を組む。
 クナイを放つ。

 ―――その全てを、日向家落ちこぼれの中忍、日向ヒナタはいとも簡単に受け止めた。

 そして、吹き飛ばされる。

「っつ!!」
「ったーーー!」
「ぐぅっ!」

 何が、おきた?
 理解できない。理解できない。
 日向ヒナタは悠々と歩く。
 吹き飛んで、今日初めて血に濡れた最強の暗部の元に。
 血だまりに落ちた3人。既に戦闘態勢は整っている。
 それに、ふふん、とヒナタは笑って。

「随分なご挨拶ね。この私に向かって刃を向けるとはいい度胸だわ」

 なんて。
 のたまって。

 見下すように、というか見下してるの丸分かりの視線で見てきて。

 耳を疑う。
 目を疑う。
 頭を疑う。
 誰だ、こいつ。
 純粋かつ愛らしい小動物系ヒナタをどこにやった。

 っていうか。
 というか。
 なんというか。
 まぁ色々とりあえず置いてアレだ。
 そう、あれ。
 なんか、

「「「ムカつく!」」」

 見事に揃った台詞にきょとんとヒナタは首を傾げる。

「ちょっと、からかいすぎちゃった?」
「はぁ!?」
「でもまぁいいデモンストレーションにはなったのかな。とりあえず、力の差、理解できた?」
「うわマジムカつくこいつ」
「わーなにーこの可愛くない子ー。可愛いヒナタはどこいっちゃったのー!?」

 本気で全然関係ないところに憤る砺埜、もとい、いのに呆れ果てる男2人組。まぁでも、2人だっていのの気持ちは分からないでもない。
 一体何が起こってるんだって話で。
 全然意味が分からないって話で。
 ―――まぁ要するに、3人とも良い感じにムカついて、良い感じに混乱しているのである。
 その絶賛混乱中の3人をマジマジと鑑賞したヒナタは。

「………え? なっ、何? いのちゃん、どっどうしたの?」

 なんて、あわあわと不安げに手を動かして見せた。
 それは、なんていうか。

「こわっ」
「きもっ」
「不気味」

 3人揃ってすざっと引いた。
 思いっきり引いた。
 壁まで引いた。

 その様を見て、堪え切れなかったのか、初めは小さな笑い声が次第に大きくなり。

「あはははは、あーもう面白っ。面白すぎる! あーうん。からかった甲斐あり! 楽しいー!!」

 いやこっちは全然楽しくないし。
 そんな3人の心の声は爆発的に笑う少女には届かない。

「っつーかなんなの。ほんとなんなのよー。意味わっかんないしー」
「理解できねぇ。あーくそマジめんどくせーなおい」
「それで結局なんでヒナタはこんなところに居るわけ?」

 もうはっきりと素に戻った3人組。
 繕うのもアホらしいと思ったのか、変化すらといてだらしなくヒナタに向き直る。ヒナタの様子から見て敵対する必要はないと理解したのもあるだろう。

「そうね。いい加減貴方達にもばらしていいかなーって思ってわざわざ出向いてあげたのよ」
「いや、だから何が」
「うんだからね」

 にっこりと笑って


「私が裏の火影様なの」


 なんて。

 のたまって。




「「「…………………………はい!?!?????」」」




 今度こそ、というか、今度もまた、3人は綺麗に固まったのであった。








 それが
 後に最年少で五代目火影の座につく日向ヒナタという少女と
 その懐刀である最強と呼ばれる暗部の
 本当の意味での初めての出会いだったり
 ……する
2009年1月1日
書いてなかった出会いなんぞ。
はっちゃけ火影様は最近書いてなかったので、どんなだったかなーと手探りでした。