『贈り物』




「火影様」

 目の前にあるものを見て、ネジは強い憤りと諦めにも似たある種の悟りを覚える。
 呟くように、もはや意識すらせずに零れた呟きを、火影はしっかりと聞き取っていた。

「ん?」

 なんだ?応えろ。
 その意思は、声の響きだけで何故か分かってしまう。

「これは、何ですか」
「見れば分かるだろう?」
「ええ。でも貴方の口から聞きたいのですが」

 憮然としたネジの言葉に、火影は笑いを堪えて、説明した。

「お前の見合い写真と、お相手のリストだ」
「……何故」
「日向の爺がうるさい」
「………私は、頼まれたって貴方に結婚を挑む気はありませんよ」
「当たり前だ。そんな事をしたら日向共々潰してやる」

 ま、自分でやらなくても、ヤツがやってはくれるが。
 そう、ひどく嬉しそうに言う火影に、深い深いため息をついた。
 これが自分の初恋の相手なれば、ため息もでるだろう。

「嫌なら、とっとと相手を見つけてくれません?…ねぇネジ兄さん?」

 くすり、と笑うのは自分よりも年下の少女。
 最も年若く火影の名を三代目より受け継いだ少女は、幼い時より暗部に属し、しかもそれを自分達に全く悟らせなかったのだから、全くもって恐ろしい才能である。

「残念ながら、日向の望むような相手はいないんですよ。…ヒナタ様」
「望まないような相手は居るのよねー」

 笑う少女に指摘されて、思わず息を詰めた。

「…テンテンはそんなんじゃありませんよ」
「あら、その台詞、テンテンに伝えてあげようかしら」
「ヒナタ様…」
「冗談よ。それ持って、テンテンのとこ行きなさい。テンテンからいい事聞けると思うわ」

 反射的に身構えたが、ヒナタはそれ以上ネジに言う事はないようだった。
 何をした?と思わないでもないが、こうなったヒナタは動く事がない。
 その事を彼女が本性を現した最初の1週間で完璧に悟った。
 仕方なしに、火影の机の前から、忌々しい手土産を持ってきびすをかえす。

 扉を開けた瞬間。


「HAPPY BIRATHDAY ネジ兄さん」


 背中に声が掛かった。
 祝いの、言葉を。
 その後素直にテンテンの元へ向かったネジは、日向の家に相応しいだけの地位を与えられた事と、己の子を授かった事をテンテンから教えられた
2005年7月9日