「日向、何してんの?制服でさ」
「…うずまき」
ぼう、として川岸に立つ少女は、いつもの内気なおどおどとした動作など欠片もなく、ただ、ただ近寄りがたく、冷たい。
けれど、何故か、自然と声をかけた。
自分を偽ることを忘れて。
「そ。うずまきナルト。んで、何してるわけ?」
明らかに、いつもの馬鹿元気な少年とは違う口調と雰囲気。
けれど、少女は全く動じない。
「あんたは?」
「俺はバイト帰り」
「あっそ」
「んで、何してんの?」
「別に。あんたに関係ない」
無愛想で、簡潔なその言葉に、へぇ、と眉を上げる。
「冷たいじゃん。日向ヒナタは俺の事が好きだとか噂で聞いたけどな」
「ええ。そうよ」
それがどうした?と言わんばかりの日向に、ふぅん、と唇を歪める。
面白い。
欲しい、な。
「優等生の日向ヒナタさんは、こんな夜遅くに、制服で何をしているんですかね?」
「…うるっさいわね。体力馬鹿で赤点常連者のうずまきナルト」
「ま、なんでもいいけど。こんな夜、その格好、襲ってくれって言ってるようなもんじゃない?」
「やれるもんならやってみなさいよ」
挑発的な日向の言葉に、彼女の家が日向流と呼ばれる古武術の宗家であることを思い出した。
それは、それで面白い。
「んじゃ、遠慮なく」
肩に担いだスポーツバックを投げ出して、この時ばかりは心底楽しい気分で、口角を持ち上げた。
別に、日向を襲いたかったわけではないが、今の日向は、明らかに強い事が分かる。
時折廊下ですれ違う彼女からは、全くそんな様子はなかったが、今の日向は違う。
す、と構えた姿は至極自然で、格好が制服であるにも関わらず、まるで空手の道場にてガイ師範と対峙した時のような緊張感と圧迫感を感じる。
日向流、構えから見て素早さ重視の体術か。
面白い。
流れるように構える。
こちらとて武術に自信ある身。
強い者と対峙した時の高揚は、他の何事にも勝る。
自身の構えは極真空手。
腰を落として隙を探す。
なるほど、矢張り強い。
隙が全く見当たらない。
だが、それなら。
―――隙を作るまでのこと。
勝負は、俺の勝ち。
言うまでもない。
当たり前の事。
…けれど。
けれど、だ。
「強いじゃん」
少々…いや、かなり乱れた息で日向を押さえつける。
組み敷いた状態で、腕の関節をとろうと身体を動かすが、するりと日向は腕を外し、なおかつ逆に関節をとろうとする。
ち、と舌打ちをして、腕に力を入れて、乱暴に引き離した。
技で言うなれば日向の方がうまい。
その技のキレときたら思わず舌鼓を打ちたくなるほどだ。
だが、腕力は確実にこちらが上。
当たり前の事だ。
強引に後ろに回りこみ、両腕の関節を決め、そのまま膝を使って前へ押し崩す。
「―――っっ!」
さすがにこれは苦しいか、日向の額に汗が浮かぶ。
「俺の勝ち、だな」
勝利宣告。
全く持って不適で、自信満々なその態度に、日向は身を強張らせてもがくが、動けば動くほど関節が軋む。
勿論俺は逃がさない。
日向の口から負けを認める言葉が出るまでは逃がすものか。
「俺の勝ち、だろ」
「っっは!だ…れがっっ!!」
全く。
こいつも俺と同じだ。
負けず嫌いの自信家。
「襲うよ」
言ってみる。
負かしたい。
完膚なまでに打ちのめしたい。
頭の中はひどく冷静で、別に襲う気も何もなかったが、日向がそれで負けを認めるなら、表情一つ変えずに自分は日向を抱けるだろう。
まぁ、自分の組み敷いた少女は、制服が故、すでに相当の肌が露出し、下着すら露わ。
乱れた息と、汗ばんで上気した身体は、男の理性を奪うくらい簡単だろう。
もともと日向はスタイルが抜群にいい。
そういえば日向に惚れてるのはキバだったか。
今俺がこうしているのを見たら、ヤツはどうするかね。
それはそれで面白そうだ。
なんて、考えていると、日向の身体が抵抗を止める。
これは効果ありか?と思って、日向の言葉を持つ。
けれど。
日向はやはり頑固だった。
矢張り、同じだ。
負けず嫌いの意地っ張り。
こいつも、俺も。
元から乱れていた制服を剥いで、俺は日向を犯した。
それでも矢張り日向の口から負けを認めることはなく。
俺達は感情をどこかに置いて一つになった。
その日、俺は日向を"お持ち帰り"した。
2005年7月7日
とっても不健全な話第一弾。後になればなるほど爽やか度は増していく。そしてまたダークに(笑)