生れ落ちたその瞬間から役目が決まっていた。

 そしてまた

 その瞬間から世界を見た。

 それは仕様がないことで、けれども幼い私に分からなかったのも…また仕様がないこと。






 『力』






 ヒナタは早熟な子供だった。
 身体がではなく精神的な部分の発達が早かった。
 それ故に、大人たちの声も理解していた。

 日向家は古くから木の葉隠れに伝わる血継限界の一族―――。
 その古さゆえに、日向は一枚岩ではない。
 宗家と分家の対立は年々悪化の道をたどっている。

 そしてヒナタにはその世界の全てが見えていた。
 それは…単純なモノではない。


 白眼


 ヒナタのそれは、普通のモノとは違った―――。
 人の全てを見透かす能力。

 心も。

 力も。


 その過去すらも。


 望む望まないを別として、全てを与える力。 
 人間の個というすべてを見透かす能力。
 激流のごとく押し寄せるその情報に、ヒナタは三度倒れ


 一度は全てに幻滅した。


 日向という一族に。
 人間という存在に。

 ……自分という存在に。


 いっそ壊れたほうがよかったのかもしれない。
 そのほうがきっと楽だっただろう。
 いっそ死んでしまえばよかった。
 きっと楽だっただろう。

 だが死ねなかった。
 壊れなかった。

 死ぬには周囲の目が邪魔で。
 ヒナタは彼らの目から逃れる方法を持たなかった。 

 壊れるのは、ヒナタの元来の気質が許さなかった。
 なによりも…それが、真実ヒナタの身を案じる数少ない人間を、苦しめることとなるから。


 選んだのは逃げること―――
 この世界から。
 ヒナタを縛るすべてのモノ逃げ出すこと。

 押し寄せる情報の波の中で、ヒナタは育った。
 もともと頭のいいヒナタは、それらをすべて飲み込んだ。
 それらを自分のものにするたびに、感情は冷めていった。
 それでも、自分を愛してくれる者のために、自分が愛する者のために自らを偽ることを覚えた。

 偽りの世界で、強くなる…その必然性を知った。

 その時すでに知識はあった。
 他者から飲み込んだ知識を、自らのものにするには力が必要だった。
 そして
 その頃ヒナタは、まだ自らの力を律する術を持たなかった。

 印によって発動させる白眼とは全く別の力。
 ヒナタの知る誰もがそんなものを知らなかった。
 ヒナタは自分を偽り続け、やがて一族の誰もを超す力をもった。
 偽りの自分は、それ相応の誰もが求めるヒナタの力から、一回り小さなものを演じ続けた。

 誰もを騙して、この世界から逃げ出すために。

 更なる力を欲した。
 それは自らの力をどうにかするために。
 やがて、一族の情報からそれに近いと思われる情報を選別する。

 火影レベルの扱う力―――禁術―――。
 すでに一族のもつ禁術は頭にある。
 だがそれは、攻撃的なものばかり。

 焦がれた。
 もっと多くのそれにはあるかも知れない。
 この力を律する術が。

 手に入れよう。

 どうやって?

 考えながら誰にも悟られずに屋敷を抜け出し、火影の屋敷にたどり着く。
 禁術のある居場所。それはすなわち禁術を最も多く扱える者の存在。

 ―――火影。

 結界が幾重も幾重も張られたその場所を、木々の隙間から除き見て、ヒナタは肩をすくめた。 
 上忍レベルの術と禁術レベル。
 真っ向から打ち破るのは不可能。

 それならどうする―――?


 唇を吊り上げた。


 火影邸から軽く5・6`離れたところで、誰も居ないことを確認して地に降り立つ。
 そして向かう。
 火影の元へ。

 人知れず入れぬのなら客になればいい。
 火影に会いさえすればいいのだ。
 顔も特徴も情報はある。
 会いさえすれば知識は勝手に転がり込むのだから。

 玄関の大きな扉の前でヒナタはどうしていいか分からない…といった風にきょろきょろと辺りを伺い、おずおずとその扉を叩いた。




 それが始まり―――