とある庭の風景



 僕の趣味。それはバードウォッチングと世間一般では呼ばれるものである。
 わざわざ山やら川やらに出かけてまで鳥を見るほどの情熱はないが、家の窓から見える小さな庭には、鳥用の餌籠や、水飲み場がしつらえてあって果樹がなる樹まである。
 朝のコーヒーを飲みながら、庭で餌をつつく小鳥達を眺めるのが僕のささやかな趣味であり、癒しである。

 5月。
 冬の気配がすっかり消え、暖かい日が続く今日この頃。
 我が家の庭を訪れる小鳥たちは一気に増える。
 いつもの朝を過ごしながら餌をついばむ小鳥達を眺めていた僕は、そこで見慣れない種類の鳥が混じっていることに気づいた。

 羽は鮮やかな赤とオレンジ。でも胴体はなんだか肌色っぽい。頭とおぼしき場所からは、羽と同じ鮮やかな赤とこれまた鮮やかな黄色。鶏冠かなにかだろうか?
 遠いうえに、他の小鳥たちに埋もれるようにして餌場にいるためよく見えない。僕は双眼鏡を引っ張り出してきて、その鳥をよく観察した。
 手の平に乗るくらいの大きさで、まるで人間の女性のような胴体。足はワシの足のように太く力強い。人間の腕があるはずのところから鳥の羽が生えていて、顔は美しい人間の女性の顔。髪の毛のかわりに鶏冠がある……。
 っていうか。

「鳥じゃねぇぇぇぇぇ!?」

 思わず叫ぶと、大声にびびった小鳥達が一斉に飛び立ち、鳥じゃないその謎の生物もいつの間にかいなくなっていた。
 しまった、と思ってもあとのまつり。
 また来てくれることを祈りつつ、観察を続けることを決意した。
 そんな非日常のはじまり。