とある庭の光景 2
僕の趣味。それはバードウォッチングと世間一般では呼ばれるものである。
わざわざ山やら川やらに出かけてまで鳥を見るほどの情熱はないが、家の窓から見える小さな庭には、鳥用の餌籠や、水飲み場がしつらえてあって果樹がなる樹まである。
朝のコーヒーを飲みながら、庭で餌をつつく小鳥達を眺めるのが僕のささやかな趣味であり、癒しである。
6月。
梅雨に入り、雨ばかりの日々が続いている。
鳥用の餌も、こまめに取り替えなくてはならない。
木の枝に小皿を針金で固定して、その上にペットショップで売っている鳥用の餌を置いているのだが大雨が降るとすぐに流れてしまう。逆に小雨だと、小皿に水がたまり餌が湿気て腐ってしまうのだ。
だが雨上がりだとごくまれに、小皿にたまった雨水で水浴びをしている小鳥などが見れたりして、それもまた楽しみの一つである。
小鳥達の餌は、できるかぎり夕方か夜にとりかえることにしている。
朝だと、臆病な小鳥達は逃げ出してしまうし昼は僕が仕事で家にいない。
今日は仕事が遅くなってしまったので、すっかり外が暗くなってしまっていたが昼間雨が降ったので餌だけでも交換しておこうと明かりをつけて外に出た。
……が、なんだか餌場のあたりから水音がする、ような気がする。
夜行性の小動物か、虫かなにかだろうか?鼻歌っぽいものが聞こえてくるがきっと虫の羽音かなにかだろう。
せめてどんな動物が水音をさせているのだろうかと、足音を潜めて近づいていくと水飲み場にいたソレがこちらを向いた。
『きゃーーー!!』
脳みそに響き渡る正体不明の女の悲鳴。
僕はたまらず、耳をおさえてその場にうずくまった。
数分後、ようやく我に返った僕が水飲み場付近を捜しても、水音を立てていた何かはすでに影も形もなかったのである。