ガラクタの世界


  『有翼』









 任務ランク:S
 部隊:暗部第3班"有翼"
 内容:日向ヒノトの素性及び日向の動向の調査











「―――違う?」
「それ…どういう事?」

 少年と少女は訝しげに眉を寄せる。
 その行為はとてもよく似通っていて、まるで2人、兄弟の様。

「だから、どう考えても可笑しいんだと」

 答える少年の眉も潜められていて、その瞳は珍しくも本当に困惑している。
 高く結んだ黒髪が揺れる。

「どう可笑しいわけ?」
「そうよ。何が言いたいの?」

 2人の不思議そうな声に、黒髪の少年は神妙な顔になった。

「結論から言うと…"日向ヒノト"は既に死んでいる」
「どう…いう意味?」
「っつか誰だっけ?」
「あんた…!あんだけ私が言ったのにもう忘れたわけ!?」
「落ち着けよ。いつものことだ」

 そう。いつものこと。
 この金髪の少年は他人に興味などなく、任務の事しか頭に入れることがないのだから。

「だからって…!」

 なおも少年を睨みつける少女。
 一つため息をついて、黒髪の少年は説明を始める。
 この2人にいつまでも構ってはいられない。

「いいか?7年前…オレ達が5歳の時だ。日向が草隠れに襲撃されたろ?あの時に日向ヒノトは死んだはずなんだ」
「居るじゃない…」
「暗部の者が息を引き取ったのを確認している。当時日向ヒノトは12歳。今のオレ達と同じだな」
「そんで?」
「だが、日向ヒノトは生きていた。アカデミー卒業後死んだはずのヒノトは、表にはおらず最近になって出てきた。書類上は下忍のまま。そして、日向ヒノトは暗部入隊試験を受ける。これはいくら暗部入隊が実力主義といっても、下忍でしかない者が暗部入隊試験を受けるなんて命知らずだ。だが日向ヒノトは暗部となった」
「実力はあった。けれどそれを隠して生きてきた。その理由は?」
「知るか。だが、気になるのは暗部が確かにヒノトが息を引き取っているのを見ていること」
「その証拠は?」
「日向ヒノトは分家だ。その呪印によって、白眼が消えるのを見た」

 その黒髪の少年の言葉に、少年が納得したように頷いた。

「あ。思い出した。確か黒羽と任務に行った時だな」
「………あーーーーもうあんたは!!っつか聞いてないわよ!あんた達!そんな時から任務してたわけ!?」

 少女の怒声に、耳をふさぎながら黒髪の少年は答える。

「…まぁ。言ってないからな。オレ達が暗部入りしたのは5歳。日向に入り込んだ草忍の始末が初任務だ」
「つまりはオレ達が生き証人ということか」
「忘れてたくせに」

 じっとりと少女が少年を睨みつけるが、少年は全く気にしない。
 というより、いまだ一度も少年の顔にはっきりとした感情というものが浮かんではいないのだ。

「それで任務だ」
「日向を探れ―――か」

 少年の感情のない声に、少女は憎憎しげに頭をかく。
 その桜色の艶やかな髪が乱れた。

「それで、日向ヒノトが任務に出かけている今がチャンスってわけ」
「そういうこと」

 黒髪の少年は軽くため息をついて頷く。

「じゃあ早く行こうぜ」

 そう言う金髪の少年は、あっという間に印を組み、青年の姿へと変わる。
 金色の頭に青色の瞳。
 黒衣に身を包んだ青年は暗部面を被る。
 その前に一瞬だけ見せた表情は紛れもない笑み。

 いつもそう。
 任務のことに対してだけ少年は感情を見せる。
 いや、任務と…たった一人の人物にだけ、本当の感情を見せる。

「あんたはもーーーー!」

 そう言いながら、桜色の髪を持つ少女は18歳前後の姿に。
 その髪はなお鮮やかな桜色。
 黒衣に身を包んだ少女は暗部面を被る。

 表情はすぅ―――と消えた。

「お前ら少しは隊長の身にもなれ…」

 呆れたようにため息をついた黒髪の少年は、20代半ばの姿に。
 真っ黒な髪を低く結んだ青年。
 黒衣に身を包んだ青年は暗部面を被る。
 呆れたような疲れたような表情はいつも変わりがない。




 暗部第3班…通称"有翼"

 黒髪と黒い目をもつ青年―――黒羽
 金髪と青い目をもつ青年―――金羽
 桃色の髪と緑の目をもつ女性―――桃羽

 S級任務達成率100%の実力を持つ者達―――。












2005年2月13日