ガラクタの世界


  『ネジ』













 キリキリキリキリと頭が痛む。
 引きちぎるようにして額宛をもぎ取る。

「―――っっ!!」

 そのあまりの激痛に身体に力が入らない。
 滝のように汗が流れる。
 ずるりと木の上から滑り落ちた。
 そのまま起き上がることもままならず、土を掻く。

 痛い

 痛い

 痛い

 全身に針を突き刺されたよう。
 久しぶりの感覚。

「―――ぁあああ!!!!!」

 消える。
 途絶える。

 意識が闇に落ちる瞬間。





 誰かの声を聞いた気がした―――。 















 その苦しみようは尋常ではなかった。





 なんとなく胸騒ぎがして、深夜にもかかわらず外に出た。
 何故そうしたのか分からない。
 ただ外に行かなければならない気がしたのだ―――。
 そうして見つけたのは…。

「―――ヒナタ…様…?」

 身体中に泥を塗り、小さく小さくうずくまる塊。
 最初は分からなかった。
 少女は泥に汚れた額宛を握り締め、土を掻き毟っている。
 ときおり漏れる声は低く、その目には何一つ映っていない。

 思わず近づいて絶句した。
 これだけ近くにいて、反射するように瞳に自分の姿を映していながら、彼女はそれに気付いてはいないのだ。

「ヒナタ様―――?」

 胸騒ぎ。
 思わず少女の前髪をのけ、額をさらす。
 青白い、汗のにじんだ額。

 現われた額に、思わず息をついた。
 そんなことがあるわけもないのに、もしかして―――と思ってしまったのだ。
 あまりにもその苦しみ方が、父に似ていたが為に。

 けれど彼女は宗家。
 呪印なんてあるはずもない。

 高く高く鳴いて、彼女は崩れ落ちた。
 それを思わず抱きかかえた。
 彼女がじっとりと汗をかいているのを感じる。

「熱でも―――」

 あるのかと思い、先程確認した額に指を這わせ、そのあまりの冷たさに絶句した。
 その小さな身体を抱えたまま走りだす。
 普段どれだけ彼女に邪険にあたっていたかも忘れて。

 衝動的に、ただ走った。










 






2005年2月20日