ガラクタの世界 『模索』 「じっちゃん!日向の忍登録書貸して!!」 「はぁ!?」 ひどく唐突に、火影の執務室に乗り込んできた少年の姿に、火影は加えたパイプを落とした。 「貸してっ!」 あっという間に目の前に現れたナルトは、早く、と言うように手を出して催促する。 その目は、ひどく真っ直ぐに輝いている。 珍しいこともあるもんじゃのう、と、火影は首を傾げながらも、少年のご所望のものを差し出す。 それが、超最高級重要文書にも関わらず、だ。 本来、幾多もの結界と暗号に守られたそれを、ナルトは難なく解いて忙しなく視線を動かす。 「ヒノトの正体かの?」 「うん!」 「そうかそうか…」 と、目を細め、とてつもない速さで書類をめくる少年に頷いた。 ナルトを見守る目はひたすらに優しい。 「じっちゃん!俺、絶対ヒノトの正体暴くから!期待してて!」 「分かった分かった。楽しみにしとくからの、だが、無理はするんじゃないぞ?日向は儂にもあまり掴めないからの?」 「うん」 諭すように人差し指を立てる老人。 素直に頷いた子供。 その光景は、まるで普通の家族のように、至極自然で温かなものだった。 (何で。何で何でなんで私がこんなことしないといけないわけ!?!?!?!?) いらいらと、土を蹴り上げながら、サクラは飛び上がる。 高く高く飛んで、辿り着いたは屋根の上。 瓦を軽く踏みしめて、己の見張るべき人間を見据える。 真白い瞳を持つもの。 これでもう5人目だ。 日向の忍は総じてレベルが高い。 下忍としていつまでも留まっているものは中々おらず、1年2年とたてば、彼らはすぐに中忍上忍となり、果ては暗部として身を置く。 それが日向の忍だ。 だから、簡単な事だ、とも思ったのだ。 日向ヒノトの可能性のある下忍を搾り出して見張る事、なんて。 「………甘かったわ………」 恐るべき日向。 確かに下忍である忍は少なく、しかも日向宗家ではなく分家だけに絞れば、大分人数は減る。 が、多い。 それでも30人以上はいるのだ。 日向の分家の忍の数は、宗家に比べ尋常でなく多い。 むすっと、したままに観察対象を眺めた。 日向の男も女も、サクラにとっては正直大して差があるようには見えない。 その、あまりに特徴的な瞳に他者の視線は集中し、その他の外見的な特徴を完全に消してしまうのだ。 一族全体の個性であり、完璧な無個性。 ある意味では、便利だ。 髪型と、身体的特徴さえ似ていれば、彼らは他の目にはまるで同じのように見えるのだから、身代わりも容易。 「面倒臭いったらありゃしないわ」 しかし、ことの発端の原因の一因は彼女自身にある。 プライドの回復の為、とでも言おうか。 「絶対この任務成功させるからな!!!!」 成功も何も既に1回失敗しているのだが、そう言いきったナルトにサクラは便乗し、2人して日向を外堀から探っているのだった。 ちなみに、シカマルは一言「めんどくせー」と呟いてどこかにか行ってしまった。 一度もやらないとは言っていない以上協力はしてくれるだろう。 否、させる。 ふっ、と黒い笑みを浮かべて、サクラは延々と日向の下忍を見張り続けるのだった。 |