とある庭の光景 3
僕の趣味。それはバードウォッチングと世間一般では呼ばれるものである。
わざわざ山やら川やらに出かけてまで鳥を見るほどの情熱はないが、家の窓から見える小さな庭には、鳥用の餌籠、水飲み場や果樹がなる樹まである。
コーヒーを飲みながら、庭でくつろぐ小鳥達を眺めるのが僕のささやかな趣味であり、癒しである。
7月。
長く降り続いた雨もあがり、日が強く照りつける夏がやってきた。
日がでるのが早いせいかはわからないが、いつもの時間餌場には鳥の影など全くない。きっと皆、すでに朝食を終えているかどこか他の場所で虫や木の実でも食べているのだろう。
そして今日も、小鳥達の影がないことを残念に思いながら朝食を食べていたのだが。
水飲み場の下の地面で、何やらがさがさと茂みを揺らす影がある。
猫か何かか?
動物は全般、嫌いじゃないからノラ猫でも何でも庭に入れるようにしてあるが、猫が小鳥達を襲うようなら話は別だ。
いつでも追い出せるように身構えていると、茂みの影は羽ばたいて飛び上がり、水飲み場のよこの止まり木に止まった。
「……?」
ソレは一見、鶏のように見えた。
だが、目のあるところには細い布がぐるぐる巻きにしてあり、尾羽のかわりに蛇が生えていた。
そしてソレは、目隠しをしているというのにまるで見えているかのような動きで水を飲み、そしてまた何事もなかったかのように地面に降り、いずこかへと去っていったのだった。
「目隠ししてるのに、見えるのか……?」
他にもたくさん突っ込みどころはあったのに、僕の口から出てきたのはそんな呆然とした呟きのみだったのである。