木の葉の忍 それは 信仰を忘れた 人 にならない。


 忍 伝承を忘れ 人 伝承を忘れ


 かつて 人 と それ を繋いだ巫女。

 人 によりて 巫女 でなくなる。

 かつて 太陽の一族と謳われた一族 人 でないことを捨てる。


 人 となった一族。

 人 にされた巫女。

 人 は忘れる。

 それ の存在を。

 人 と それ の繋がりは消滅する。






「戻って…ください」

 追っ手の言葉に、弧耀が目を細める。
 暗部面はない。それを被る人間は、今、弧耀の腕の中で荒い息を吐いている。
 それは、本当に急な出来事だった。
 弧耀と炎弧。

 2人、逃げようと言った。
 きっと逃げることの出来るだけの力をつけた。
 1人なれば無理でも、2人なら、きっと抜け出せると思った。

 木の葉から。
 日向から。
 そう、信じていた。

 けれど。
 木の葉を出て、10`も行かないうちに、急に炎弧が苦しみだしたのだ。
 息も絶え絶えになる炎弧に、弧耀は訳も分からず、炎弧を見守り続けた。
 木の葉からの追っ手が現れたのは、そんな折だった。

 相手は暗部。
 確かに自分の部下として見たことのある人間だ。
 鋭い蒼の瞳が、追っ手を威圧する。

「暗部部隊長、弧耀。これは、どういうことです」

 そう言ったのが先ほどのこと。
 その次の台詞が、

「戻って…ください」
 
 というものだった。
 言ったのは、別人なれど。
 取り敢えず、炎弧を地に降ろす。
 自分達を、追ってきたのなら、彼らは敵だ。

「何故です…弧耀殿。貴方はこれまで、木の葉の為に在り続けたはずだ…」

 その言葉は小隊長だろう。
 確か、弧耀と任務を幾度もこなした。
 炎弧と面識もあるはずだ。

 だが、弧耀は笑う。
 冷たくうっすらと笑みを浮かべる。

「木の葉の為?ああ。そうだな。俺は今まで木の葉のために在った」

 バカみたいに、木の葉の為に戦った。
 幾度も幾度も木の葉を滅ぼしたいと願い、それは火影による術に邪魔された。
 木の葉の為に。

 ―――全くくだらない。

 首輪をつけられた番犬が否応なしに戦い続けただけだ。
 それしか生きる術も、木の葉の呪縛から逃れる術も見つからなかっただけだ。
 けれど、今は違う。

 自分、1人なら無理だっただろう。
 木の葉に縛られて、檻の中で首輪をつけられて、そこから逃れることなんて出来なかっただろう。

「俺は俺だ。木の葉のモノじゃない。悪いな、梓磁。俺は抜けるぞ。お前になら分かるだろう?俺は加減しない。死にたいやつから来い」
「………」

 例え、死にたくなかろうと、死ぬわけにはいかなくととも、彼らは来るだろう。
 敵うわけがないと知りながら、それでも彼らは死にに来るだろう。
 それが彼らの役目だから。
 それが忍だから。


 ―――血だまりに沈む彼らに、ほんの少しだけ、同情した。


 それでも、自分達が止まることなど出来ない。

「ねぇ炎弧…?どうすればいい?どうすればお前をその苦しみから救ってやれる?」

 その答えは―――ない。


 けれど。


 けれどもしかしたら―――。
 そういうこと、なのかも知れない。

 答えは―――…。



 きっと―――














「今…なんて…」
「―――」

 うなり声のような低い低い声に、答えはなかった。

「もう一度、言ってくれない?最近ちょっと耳が悪くてさ」
「右に同じ」

 軽く、けれどもひどく重々しく響いた2つの声に、唇が開いた。

「―――今、言ったとおりです。貴方方にはその許可を出して貰いたく参りました」

 そう、暗部は言って、もう一度、先ほどの言葉を繰り返した。











「"奈良シカマル"の拘束と、彼が匿っていると思われる"うずまきナルト"と"日向ヒナタ"の拘束を担当上忍として許可して頂きたい」
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